アイリー動物病院 院内

アイリーな日々

小さな存在・大きな脅威~マダニ編~

ペットのマダニについて

今日は前回のノミ予防に引き続き、マダニ予防についてお知らせいたします。

ノミよりマダニ予防の方がピンと来る方も多いかもしれませんね。

2013年、マダニが媒介する病気「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」による人間の死亡事例が初めて報告されてから、一気に関心が高まり、予防率も上がってきました。

犬や猫につくフタトゲチマダニ
国立感染症研究所昆虫学部より引用

マダニがつくとペットはどうなる?

マダニは多くの病原体を媒介します。
その為、大量に寄生すると吸血による貧血や皮膚炎だけでなく、命にかかわる病気にかかることもあります。
バベシア原虫が犬の赤血球に寄生して破壊し、貧血・発熱・黄疸・食欲不振が見られ、急性の場合は死に至る「犬バベシア症」は沖縄~北海道まで全国各地で発生が確認されています。

人間への影響は?

先に述べたように、マダニは多くの病原体を媒介します。
「SFTS」は2023年7月現在、発生累計が900件、内死亡件数が101件と報告されています。
感染経路はマダニを介したものが中心(血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告あり)で、治療は対照的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。

「ライム病」はマダニからペットや人にも感染する病気で、人に感染した場合、皮膚症状、神経症状、関節炎等がみられます。

「日本紅斑熱」はマダニが人にリケッチアという病原体をうつすことで引き起こされます。発熱、全身の発信などの症状だけでなく、死亡する場合もある大変危険な病気です。

マダニの生態

「マダニは暖かい地方に多い」という認識は捨てること!!
日本に生息するマダニは10種類以上で、どんな気候にも適応し、全国でその姿は確認されています。

屋外の草や木に潜んでいて、犬や猫が通ると寄生します。
幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長します。

犬や猫に寄生するダニと成長過程
ノミダニフィラリア.com(https://n-d-f.com/)より引用

成ダニはとても大きくなりますが、幼ダニ若ダニは小さいため、肉眼での確認は困難です。(ノミダニフィラリア.comのHPより画像抜粋)
逆に吸血して丸々太った成ダニは、まるでブルーベリーのようになります。

マダニは吸血と唾液の分泌を繰り返して病気を媒介します。
吸血開始から48時間以内なら、病気を媒介する危険性が低いので、駆除薬の投与で早い対応を心がけましょう。
マダニのピークシーズンは成ダニの多い春だけと思われがちですが、秋には若ダニ幼ダニが多く発生し、春と秋の2回ピークがあるので、年間を通じた定期的なマダニ対策が重要です。

マダニの寄生ポイント

頭・耳・目のふち・お腹・足指の間・背中など、特に皮膚の柔らかいところは要チェックです。

もし、マダニを発見しても、無理に取ろうしてはいけません!!
既に吸血が始まっている場合はトゲが抜けずに残ってしまい、化膿したり病原体を犬猫にうつしてしまいかねません。
また、つぶしてしまうと卵を飛び散らせることになります。
見つけたら、動物病院で処置してもらって下さい。

被害を防ぐには

【駆除薬の種類】はノミと同様です。

ノミもマダニも、彼らの生態を知っていただくことで、「小さな存在・大きな脅威」の理由がおわかりいただけたでしょうか?

愛犬猫とご家族全員の健康を守るために、ぜひノミ・マダニの定期予防をよろしくお願いいたします。

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